名古屋の18画廊が共同開催する展覧会「情の深みと浅さ」を取材

名古屋の18画廊が共同開催する展覧会「情の深みと浅さ」を取材

2019-10-15
インスタレーション

今回取材したのはヤマザキマザック美術館で行われた展覧会「情の深みと浅さ」

この展覧会はNCAM(Nagoya Contemporary Art Map)という名古屋周辺の現代美術系のギャラリーが画廊マップを作ろうと発足したチームが主体となり開催されていて、参加しているのは名古屋にある現代美術ギャラリー18画廊が総勢25人の作家を選出し展示しています。「情の時代」というテーマでそれぞれがどのように色を見せるのか。それではご紹介致します。

アール・ヌーヴォーと現代美術の重なり

今回展示が行われている展示会場は新栄駅すぐ近くのヤマザキマザック美術館です。

この美術館は普段、アール・ヌーヴォーの代表的な作家であるガレをはじめとする、様々な作家達のガラス工芸品、家具や18世紀から20世紀に至るフランス美術を扱っています。

内装も華やかで、美しく統一された壁紙とフランス美術の作品がうまく調和していました。

深川 瑞恵(galleryIDF)《コセイ》2019年 21×5×9cm ガラス,フレームワーク,宙吹き

しかし、現代美術を扱うギャラリーへはいった方はお分かりになると思うのですが、普通現代美術ははホワイトキューブという真っ白で統一された壁や床の中に作品が展示されます。

今回の展示空間は真っ白とは反対の華やかな装飾が施された壁紙の中で行われるためどのような展示になっているか全く予想できず期待と少しの不安を持ち取材に向かいました。

エレベータで会場まで上がり、最初お出迎えしていただいたのはこちらの作品。

柴田 麻衣(ギャラリー芽楽)

ギャラリー芽楽さんより出品された柴田麻衣さんの作品です。
驚くほど自然に壁とが溶け込んでいて作品が引き立てられていました。

また、この作品は見ている瞬間だけで終わりません。

実はこの展覧会が行われている展示フロアには窓がなく少し閉鎖的な空間になっています。
そこでこのような窓をモチーフにした作品を最初に設えることによって、この後見ていく空間での閉塞感から解放しているのではないでしょうか。

絵画もインスタレーションも垣根を超えて

展示されている作品は以前取材させていただいた大森準平さんの作品や清河北斗さんの作品など立体的なものから、原遊さんのようなポップな絵画まで本当に様々な種類、属性の作品が並んでいました。

大森 準平 (galleryNAOMASAKI)《Recomposition Neo Jomon Doki – Suisen》2019年 35×44×21cm セラミック

工芸的な大森さんの作品はこの美術館の特色であるオールドなスタイルを汲み取り存在感を漂わせつつひっそりとそこに存在していました。

一方、原遊さんのような比較的ポップな要素が強く現代的な作品もまた空間と乖離せずちょうど良いバランス感覚で展示されていました。

原遊 (NODA CONTEMPORARY)

展覧会のテーマは情の時代。

情報が溢れた世界では感情に飲み込まれないよう自らの情によって自らを飼いならす必要がある。

そんなあいちトリエンナーレからのメッセージを受け取ったかのようなこちらの作品。

セシル・アンドリュ (galleryHAM)《LATENT ENERGY 1/潜在力!》2014 18.2×37.8×37.7cm フランス語辞書,ガラス,鏡,木,塗料

これは、試験管の中にフランス語の辞書が詰め込まれている作品です。

辞書という情報が試験管という実験を想起させるような道具の中に詰め込まれている様子は私たちにどのようなメッセージを投げかけているのでしょうか。

まとめ

作品数も多く、美術館との調和を取るのが難しい中見事に作品同士をすり合わせ、時には相対しながらもそれがアクセントとなり緩やかに繋がっていく構図は「情の深みと浅さ」を空間全体で表現し、鑑賞者にそっと何かを残していくような感覚を覚えました。

展覧会情報

「情の深みと浅さ」展

■主催:ヤマザキマザック美術館、NCAM (Nagoya Contemporary Art Map)
■会期:10月1日(火)~10月14日(月・祝)
■開催場所:ヤマザキマザック美術館
■住所:愛知県名古屋市東区葵1-19-30
■開館時間:平日:午前10時~午後5時30分(入館は閉館の30分前まで)土日祝:午前10時~午後5時(入館は閉館の30分前まで
■休館日:10月7日(月)
■料金:一般1000円 (10名様以上800円)、小・中・高生500円、小学生未満無料
■美術館問い合わせ先:052-937-3737
■ Webサイトアドレス:http://www.mazak-art.com
■企画問い合わせ先:

Nagoya Contemporary Art Map(NCAM)事務局
担当:竹松(GALLERY IDF)
052-702-1206
HP:https://ncam.localinfo.jp/