工業製品、日用品、美術品。「LOT-EK」

工業製品、日用品、美術品。「LOT-EK」

2020-03-29
インスタレーション

今回取材したのはLgalleryさんで行われた展覧会「LOT-EK」
日常を作るものを素材とし、繊細な美術品へと変化させる技は決して人間だけの力ではなしえなかったことを感じさせてくれます。
それではご紹介いたします。

緻密かつ繊細なものを生み出す

古来より私たち人類は様々な道具を発明しそれを扱い世界を広げ、またより良い暮らしへと突き進んできました。
今日の都市生活ではその科学技術が満遍なく使用され、これまで想像もできなかったほどの快適な暮らしがなされています。

それらの技術は文化全体にも影響を及ぼしており、今回紹介するこの「LOT-EK」展においても例外ではありません。

3Dプリンターで細かな格子状に段ボールをくりぬき、黄色で塗装された作品。
くり抜かれる図形のモチーフになっているのは建物の図面です。

実はLOT-EKは建築のプロフェッショナルでもありこれまでにアメリカ国内外の住宅や商業施設に携わってきた実績があります。
そんな彼らが作り出す作品はとてもユニークです。

先ほども紹介したこの段ボールのシリーズ。
これらは彼らの事務所へ届いた配送用の段ボールを使用して作られています。
彼らが過ごす日常にある素材を使うと言うところがまたこだわりを感じさせます。

工業製品の再現性

こちらは廃棄された緩衝材を元に制作された作品。
製品を守るために複雑な形で整形された緩衝材の型を利用することによって非常に面白い造形を生み出しています。

これらの作品に共通して言えることはどれも「再現性」を持っていると言うことです。
どれも切り抜かせる形や図面、緩衝剤の型を作ってしまえばいくらでも作ることができます。

このいわゆる「版画的」な作品制作プロセスは現代の工業化と言う文化の侵食、ある種の文化のリノベーションが見えてくるように思えます。
技術はもうすでにほとんどのものが再現できるようになったこの世の中で何が美術作品をそれとたらしめるのでしょうか。

また、これらの作品は環境や生態学的主張も持ち合わせていて、本来ならば捨てられていくものを作品として魅せていく形の芸術作品にもなっています。
圧倒的な消費社会になり、環境汚染が深刻に進んでしまった世界において私たちはどう対応しエコシステムをここから再構築、進化させていかなければいけないのか、そんなことも考えさせられます。

まとめ

産業によって生み出されたものを素材とし、新たな視点からものをクリエイトしていく姿勢は近年ものすごく活発に行われています。
その中で建築と言う分野からエコシステムを見直し、美術作品につなげていく彼らはここからどのように考えを深めていくのか楽しみです。

前回このギャラリーで取材した展覧会記事はこちら

支持体に考えをもつ。Donald Silverstein ドナルド・シルバーステイン展
今回取材したのはLgalleryさん(名古屋市名東区)で行われているDonald Silverstein(ドナルド・シルバーステイン)さんの特別展 様々な支持体…
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展覧会情報

「LOT−EK」展

会期:2020.3.14 ~ 29
open:13:00 ~ 20:00
会期中無休

場所:L gallery
名古屋市名東区本郷1-43
The Apartment LiF F-1