黒の世界に映された「日常」。別所洋輝個展「何時かのおくりもの」

黒の世界に映された「日常」。別所洋輝個展「何時かのおくりもの」

2019-02-05
絵画

吸い込まれるような黒を基調とした作品群。その中には儚ささある種の脆さ、退廃的な雰囲気も感じ取ることができます。それではご紹介していきます。

「日常」をテーマにした作品

別所氏の描くテーマの中に「日常」というものがある。

例えばこの作品。

《papa》

「歩行者専用」の交通標識がモチーフになっていることがわかる。
道路標識というのは、日常の中にありふれているものであると同時に見なければいけないものである。それは日常の中に組み込まれた強制力のようなもので、その不自由さ—それは必ずしも対象に害を及ぼすわけではないが—に慣れてしまった私たちの日常を描き出しているようにも思える。

また、目を凝らしてみると、少女の後ろにうっすら2人の大人が描いてあることがわかる。
これはこの少女の両親かもしれないし、あるいは少女が成長した後の姿かもしれない。

このような暗示が暗いバックカラーの中で展開されることによって不吉な未来を鑑賞者の中に思い起こさせる。

幼少期の「日常」

《かくれんぼ》

今回の展覧会で一番大型の作品だったのがこれだ。
物干し竿に大人用の衣服が吊り下げられ、シンメトリーに構成が広がっているのが特徴的だ。

しかし、これは完全にシンメトリーな構成というわけでもない。
後ろのマフラーの柄や帽子の色などこのシンメトリー世界の”綻び”のような部分が散りばめられている。
その”綻び”はシンメトリーという均衡世界を壊してしまう危険を孕んだ因子であるとともに、それらがオブジェクトとして存在することによってそれぞれの均衡が保たれる様相を表現している。

また、衣服の手の部分には折り紙のモチーフが配されており、人間の存在を仄めかすように—日常を映し出すように—描かれている。

まとめ

儚く、危うい均衡をテーマに据えた作品は、日常を作品の中に取り込みある種のノスタルジー的感傷をよぶ別所氏の作品はその明るいモチーフではなくぽっかりと口を開けて待つ暗闇にあるのかもしれない。

作家紹介

別所 洋輝  HIROAKI BESSHO

1982年 岐阜県可児市生まれ
2000年 岐阜県立加納高等学校 美術科卒業
2006年 愛知県立芸術大学美術学部油画専攻卒業

HP:http://hiroakibessho.jimdo.com/
facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100008443571947

展覧会紹介

「何時かのおくりもの “gift in the one day”別所洋輝展

会期:2019131日(木)~210日(日)
        12:0018:00      月火水 休廊

会場:ハートフィールドギャラリー
       名古屋市中区栄5-4-33 えいわビル1F