今回取材したのはgallery Nさんで行われた藤原葵さんの展覧会「力こそパワー!」
あいちトリエンナーレ2019にも出展された爆発のエフェクトを使用した作品は、非常にダイナミックなうねりを描きキラキラと輝いていました。また、光を意識して描かれた新しい展開にも注目です。それではご紹介致します。
爆発から光へ
爆発のような表現が特徴的な藤原さんの作品。
今回のあいちトリエンナーレにも出展されていました。
キラキラと輝く作品は今まさに爆発が起こり光っているような臨場感を鑑賞者に与えます。
今回galleryNさんで行われた展覧会では、あいちトリエンナーレで出品されたような従来の作品と少し視点をかえ展開さえています。
これまではアニメなどで使われる爆発のエフェクトを存分に使い「爆発」という部分に着目した表現が多く感じられましたが、今回の展覧会では「光」に視点が置かれているように思えました。
実際に、展示されていた作品の中にはこのような比較的シンプルな表現がありました。
どこかの星から降ってきた光の矢のようにも見えるこの作品は「爆発」というより「光が射す」という表現の方が的確だと感じさせます。
また、十字架のように走る光のラインはラメを散りばめてあるだけでなく、背後に色を塗っておくことによって奥行きや光の色、雰囲気を調整していました。背後にどのような色を持ってくるかによって作品の印象がガラッと変わってくるのでしょう。
京アニ事件、そしてトリエンナーレ
今回のこの展覧会は藤原さんにとって大きな変化の間にあたる時期でした。
あいちトリエンナーレ開催の少し前。京都のアニメ制作会社で大きな事件が起こりました。
京都アニメーションでの火災テロです。
もともと、「爆発」という表現を取り扱っていた彼女にとってこの事件は自分自身の表現に対し、改めて深く考えるきっかけになったそうです。
藤原さんの「爆発」という表現が持つ意味は破壊と再生。
物質はいつか崩壊し、崩れていく。その後またどこかで新たに再生され続いていくという事象の定理を表現していた彼女にとって「破壊」の持つインパクトはこれほどのものなのかと、改めて感じたのではないでしょうか。
そして、京都の事件からすこしたち、あいちトリエンナーレが始まった頃から、表現の不自由に関する報道や、動きが盛んになってきました。
前述したように、トリエンナーレの出展作家だった彼女は京都の事件に加え、表現の自由という問題にも取り組んで行かなければいけないのでした。
そのような苦しい状況の中、生み出された作品はどこか苦しみを孕んでいるような、それでいて新しい方向へ向かっているようにも思えました。
まとめ
爆発=崩壊、崩壊したものはまた再生していく。そのような思いで制作をしていた藤原さんは今回のこれらの事件を通して新たに自分自身へ問うきっかけとなったでしょう。彼女の作品はこれからどのように向かっていくのか。当事者(作家)としてどのような表現をしていくのか気になるところです。
前回このギャラリーで行われた展覧会
展覧会情報
「力こそパワー!」藤原 葵
会期:2019.10.19 ~ 10.22
open:13:00 ~ 20:00
場所:gallery N
名古屋市千種区鏡池通3-5-1