今回取材したのはケンジタキギャラリー(名古屋市中区)さんで行われている染谷 亜里可さんの展覧会「Left inside Right」
彼女の作品の中で変化していくさまざまなモチーフ(物質)は、現実世界と平面的な空間の間にある関係性を指摘します。また、コメントにもあるように「シンメトリー」というキーワードが作品の表現の根幹にあるということもじんわりと伝わってきました。それではご紹介いたします。
空間の中で変化していく物質
ギャラリーに入ってすぐの大きなホールに展示してあったこの作品。
この作品はベルベットを脱色液(漂白剤)で脱色し、色の濃さの違いで絵が描かれていました。実際にギャラリーへ行き、観てみると光の当たり方やみる角度によって色の具合が異なり、作品の変化性を感じました。
また、このシリーズに描かれているモチーフにも興味深いものがありました。
このシリーズがモチーフとしているのは箱で作られた飛行機のような立体です。作品の中でこの立体は、構成する箱を組み替えたり配置や視点を変えたりして表現されていきます。このようなアプローチの中で生まれてくる錯覚的な表現は、物の可変性やどこに視点を置き物事を観察していくか、ということを問いかけられているようでした。
シンメトリーがもつメッセージ
展示されていた作品はベルベットを使った物だけではありません。
ドローイングのような作品も多く展示されていました。
ここでもやはり意識されていたのは「シンメトリー」。
例えばこちらの作品
この作品は、画用紙の中央で想定した形を切り出し、それを折り曲げ上から描くことによって折り曲げた部分だけ色が入らず対称(シンメトリー)になるという方法を用いて作られています。
また、このほかにも凹凸を利用し、左右対称に描いたものもありました。
こういった中で見えてくることは、シンメトリーの多様性です。
シンメトリーとは「対称。左右のつり合いが取れていること。」ではありますが、染谷さんの中には独自の感覚がありました。また、冒頭にもご紹介した箱の作品も同じように独自の法則性に基づいて組み替えられていると教えてくださいました。
実際にギャラリーに足を運び、作品を見て、どのように変化しているのか法則性を見つけてみるのもいいかもしれませんね。
まとめ
ベルベットを用いた作品は光の当たる角度や、みる方向によってさまざまな表情を見せます。このような変化の多様性を作家の染谷さんは表現したかったのではないでしょうか。また、「シンメトリー」という言葉の中にあるアシンメトリーな要素を作品の中で問題提起し鑑賞者の心に何かを残します。
展覧会情報
染谷 亜里可 展 – Left inside Right
会期 : 2019年5月18日(土)- 6月22日(土)
会場 : ケンジタキギャラリー
名古屋市中区栄3-20-25
TEL 052-264-7747
時間 : 11:00 – 13:00 / 14:00 -18:00
休廊 : 日、月、祝
内容 : 新作、近作の平面作品を展示。
ベルベットを脱色して描く「Decolor」新シリーズを中心にドローイングも含めて展示予定。
Decolorの新しいシリーズは、「third reverse」(第三の転回)と題された作品群。同一のシルエットから、積み木などのゲームのように部分を組み替えていく連作。実在 – 非実在という直線から外れた在り方など、この世界のまた別の在り方を創出する試みという。
作者コメント
シンメトリックなイメージ、例えば鏡像、プラスとマイナス、紙の裏表、そして在るか無いかの様に、自明のことと考えていた二項対立のもの(同じとは何かという問題も含め)や概念に対して、第三の場所に存在しているものがあるというこの世界の捉え方があります。今回の Left inside Right は、その第三のルールをパズルやゲームのように利用して、この世界のまた別の在り方を作り出してみようとしたものです。(染谷亜里可)