今回取材したのはAinsophdispatch(名古屋市中村区)さんで行われている阿部大介さんの展覧会「Figure」
版画とはどこまで版画なのかという問いを残すような作品や、人と思われるような雰囲気が漂う版画を展示されていました。作品はどれも丁寧に刷られており、作家の作品への真摯な姿勢が見えるようでした。それではご紹介していきます。
人はどこをみて人と思うか
会場に入りまず目に入ってきた作品たち。
今回の展覧会のDMにも採用されている作品群です。
壁一面にかけられた様々な形を持った、影は人を思わせます。
鑑賞していく中で気づいたこと、それは「なぜ自分は人と判断できたのか、もしくはそう思えたのか。」ということでした。例えばこの作品に注目してみましょう。
私自身は、この作品は佇んでいる女性を表しているように見えました。しかし、なぜ自分はこの影を女性と判断したのか。また、なぜ人間だと思えたのかという疑問が残ります。人間の大きな特徴である「顔」、「目」、「鼻」、など一つも書かれていないのにも関わらずそう思えてしまいました。人によってどのようなものが刷られているのかということを表面化させ、何をみて日々人と対峙しているのかがわかる一種の実験装置なのかもしれませんね。
あなたはこの作品、何を描いているように見えましたか?
金属的な要素をもつ版画
展示された作品をみていく中で驚いたのはこちらの作品。
クレーンの先端や、
タイヤなどがありました。
これらの作品は何段階かのプロセスに分けられ作られています。
まず、元のモデルとなるものをシリコンで型取りをします。
そして、服にプリントする際に用いられる特殊なインク(発泡バインダー)を型に流し込みます。
固まったら型からの剥がし、一部を熱で溶かし完成です。
この剥がし取る、という操作が版画を思い起こさせているのかもしれません。
このような段階に分けられ作られた作品。特に注目したいのは溶けている部分です。この部分では何が表現したかったのでしょうか。私には表面は金属的な要素を持ちつつも、実際の材質はぐにゃぐにゃと柔らかいものであるというサルバドール・ダリのような非現実性を表現しているように思えました。
まとめ
クレーンの先端やタイヤなどの立体的な作品がもつ質感などはとても興味深く思えました。また、壁一面に展示された版画は「人はどこで人と判断しているのか」ということを実験されているようにも思えました。
展覧会情報
「Figure」阿部大介
会期:2019/05/25〜2019/06/08
open:13:00〜19:00 木曜休
場所:Ainsophdispatch
名古屋市中村区亀島1-8-26
人種、国籍、宗教、性別、年齢、障害が
分からない人のような形
阿部大介 | Daisuke Abe