現れる風景と消えていくイメージ。長谷川 哲展

現れる風景と消えていくイメージ。長谷川 哲展

2019-06-04
写真

今回取材したのはgalleryA・C・S(名古屋市中区)さんでおこなわれた長谷川哲さん展覧会

無数に描かれた線を意識が作りだす抽象的風景に考えが深まります。また、映像作品として展示してあった制作風景もみていて驚きと発見がありました。それではご紹介していきます。

プリンターの特性を生かし制作

まずご紹介するのはこちらの作品。
一見白と黒だけで作られた抽象画のように見えます。しかし、よく見てみると真ん中の方に人がいるのがわかります。

こちらも。

抽象画と思いきや細密な部分も細々と描かれていました。この仕掛けは一体なんなのか。その答えは絵画作品の横にある映像にありました。

この映像は作品を制作する過程を逆再生したもので、どのようにこれらの作品が作られているのかすぐに理解することができました。

作品の制作手順はこうです。
1.街の中でスナップ写真を撮り題材を決定する
2.それをプリンターで紙に出力
3.通常プリンターのインクは熱によって定着するという性質を利用し、熱が加わる前に印刷された紙をとる。
4.それをティッシュなどで擦っていき抽象化する
というような手順で作られています。

プリンターのインクにそのような性質があるのが驚きでした。

消えていく具象から抽象への変化

ここまで紹介した作品たちはそれぞれどのくらい線が加えられているか(加工されているか)が少しづつ違っています。
作家の長谷川さんにこれらの作品の完成はどこなのか、と尋ねてみると「だいたいバランスが取れているところが完成だと思っています。やり過ぎてもあまりしっくり来ないし、加工が少なくても面白みが少ないので。」とおっしゃっていました。

なるほど、長年培ってきた感覚のなかで作品の完成を決めていくんですね。

また、長谷川さんの作る作品の中でもキーワードになりそうなものが「抽象と具象の関係性」です。
写真という現実を切り取ったリアルな部分と、それを改変しできた虚構の2次元的世界。
この二つの関係性が相対することによって生まれる状況が私たちに「何か」を問いかけているようでした。

まとめ

制作過程がとても面白い展示で、最初に見た時には「どんな風に作っているんだろう。」とすごく考えることができました。また、具象と抽象にある関係性などへの考察も広がり、非常に「問い」が残る展覧会でした。

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展覧会情報

長谷川 哲展
会期:5/11~5/25

場所:galleryA・C・S
名古屋市中区栄1丁目13-4 みその大林ビル1F