今回取材したのは画廊若林(名古屋市東区)で行われた松原遼展
美術教員の経歴を持つ彼は、アカデミックに作品を作り上げていました。鑑賞者の視線がどのように流れどこに終着点があるのかを分析し、理論に裏打ちされた作品は存在感を放っていました。そんな松原遼さんの展覧会をご紹介します。
構図理論を駆使して作品を作る
松原さんの作品は理論を組み合わせて作られているものが多く、視線の誘導技術の高さが伺えました。
例えばこの作品。
描かれているものは木と果物です。
一見すると「よくある普通の絵画」なのですが構図に仕掛けが施してあります。
観る人の目に最初に映る場所は、木です。
この絵画の上部半分ほどをしめる木の存在は果物よりも注目されやすくなっていました。
この木が伸びている横のラインにあわせ、果物も配置されています。
ちょうど木の影と果物の輪郭が接続しているのがわかりました。
このように「接続」することによって、そのまま果物輪郭に沿って視線を流していくことができます。
(黒い線が視線のルートです。)
本当に構図によって絵画の完成度が圧倒的に変わってきてしまうんですね。
未完成なものを完成にする
このキジの作品。
実は未完成で終わっているんです。
どういうことかというと、
胴体の輪郭がなく筆が走ったまま終わっています。
なぜこのようなカタチになったのか松原さんに訪ねてみたところ、
「胴体などを描く必要がなかったので描きませんでした。頭を描いてあるだけでキジと分かるのでこれ以上描いても蛇足になってしまう可能性がありますし、何より未完成のまま終わらせることに魅力があるんです。」
なるほど、永遠に完成しない作品というのは可能性の象徴のようにも思えますね。
また、ピエロの人形などにも松原さんは興味があるそうで、描いていらっしゃいました。
まとめ
高度に積み重なる理論と意図は絡み合い存在感を大きくしていきます。
人間のようで生きていない存在のピエロに興味を持つのも、その独特の雰囲気の所為かもしれませんね。
展覧会情報
松原 遼展
会期:3/16〜3/31
場所:画廊若林
名古屋市東区葵一丁目6-7 大昌ビル2F