窓辺から見える隣人。田中藍衣「垣根と隣人」

窓辺から見える隣人。田中藍衣「垣根と隣人」

2019-03-27
絵画

今回取材したのはgallery N(名古屋市千種区)で行われた田中藍衣さんの「垣根と隣人」
岩絵具で描かれた絵画はどこかおぼろげで、夢の中にいるような作品が多く感じました。
作品からのぞく世界はどんな風になっているんでしょうか。
それではご紹介していきます。

窓としてとらえる

今回の展示のタイトルは「垣根と隣人」
垣根の向こう側には他人の息づかい、生活があるという事実を表現しているようにも思えました。

作品にはこうした十字架のようなものが引いてあり、これが窓枠として表現されています。

この「窓」から見える世界というのは作者の田中さん自身が感じている世界との距離感なのかもしれません。
また、これらの窓枠の交点。
つまり線と線が重なる部分が中心からずれているものが多くあります。

この「ずれ」というのは人が生きている中で感じる価値観の違いだったり、文化の違いを表しているように思えました。

作品に込められたテーマを探れば探るほど、込められたイメージが溢れ出してくるような感じがして作品の持つエネルギーを感じました。

鉱石を砕いて混ぜる

これらの作品は先ほども言った通り、岩絵具を使って作られています。

岩絵具とは
主に鉱石を砕いてつくられた粒子状の日本画絵具です。粒子は砂のように粗く、
艶のないマットな質感が特徴です。絵具そのものに接着性はなく、膠液(にかわえき)と加えることにより支持体に接着します。
引用:http://zokeifile.musabi.ac.jp/%E5%B2%A9%E7%B5%B5%E5%85%B7/

説明にもあるように、材料が鉱石なので光に当たるとキラキラ光って見えるんです。
このキラキラも作品が夢の中にいるかのように見せる一つの理由なのかもしれません。

また、鉱石という特性上、油絵の具や、水彩絵の具のように色を混ぜることができません。
色の種類もたくさんあるというわけでもなく、シアン・マゼンタ・イエローという色の三原色が基本となっています。

田中さんはこの三原色をあえて混ぜ色の配合に挑戦しています。

どういうことかというと。
この点々が岩絵具です。

このように一つ一つが混ざらずとも粒同士を混ぜるとモザイクのようになり、遠くから見れば混ざっているように見えるのです。

まとめ

岩絵具を巧みに使う技術や、窓の外と自身の関係性に面白さを感じた展覧会でした。
また、考えて観るということを意識すると、作品がより一層面白くなる。というように深みのあるものばかりでとても興味深かったです。

展覧会情報

垣根と隣人

会期:3/2〜3/17
場所:gallery N
〒464-0816
名古屋市千種区鏡池通3-5-1
初日は18時開廊、最終日は18時終了
3月2日 sat 19:00- オープニングトーク
3月16日 sat 19:30- ゲストトーク ゲスト:鈴木俊晴(豊田市美術館学芸員)