引かれた線は服。Unprepared -無交差-

引かれた線は服。Unprepared -無交差-

2019-06-14
インスタレーション

今回取材したのはArt Lab Aichi(名古屋市中区)で行われている「Unprepared -無交差-」

鑑賞者を導くように配置引かれた服の河は、会場全体を緩やかに駆け巡りやがてどこかへ消えていきます。また、壁にかけられた作品も抽象的なイメージを含んでいて、観る人をさらに惹きつけます。それではご紹介します。

会場を流れる河

会場に入り驚いたのは無数に敷かれていた服たちです。

敷かれている服は女性、男性、幼児、関係なくランダムに並べられているようでした。会場を縦横無尽に駆け巡るこの服の河は、踏むこともできます。

服を試しに踏んでみると、だんだんとクセになり次第に服の上だけを選んで歩くようになっていました。この服の河は鑑賞者を誘導する導線のような役割も持っているのかもしれません。本来、服は着るために作られたものであるという概念を覆し、あえて鑑賞者の導線のように配置することによってこのような効果が生まれているように思えました。

また、服の河の上を歩き続けているとあることに気がつきます。

時々、服の袖や、布の部分が引っかかり転びそうになることがありました。この状況を客観視すると、まるで捨てられた衣服が踏んでいく人間の足を掴み迫ろうとしているようにも取れます。

推測するに、使われている衣服は捨てられゴミ処理場に集積していく運命だったのでしょう。しかし、偶然ここに流れ着き作品へと昇華されているという、偶発性がまた作品を奥深いものにします。

この服の河は三途の川なのでしょうかそれとも、天使が通る道なのでしょうか。

荒廃した部屋と非現実的な絵画たち

壁にかけらている作品を見渡してみると、どれも具象的ではあるものの非現実的なものばかり。まるで、おとぎ話の「不思議の国のアリス」の世界へ飛び込んだような感覚になります。

例えばこの作品。

一見すると、大きな絵画のように見えますが、周りを含めよくよく見てみると、大きな本のような形になっています。

このような作品に加え、服を踏み、鑑賞するという不安定さも非現実的な空気感を作る一因となっているのかもしれません。

また、会場の真ん中あたりに設置されたこの箱。

この中にもたくさんの服がびっしりと敷かれていました。

このブラックボックス的な意味を含んだ箱はなにを表しているのでしょうか。
様々な想像が膨らみます。

まとめ

鑑賞者を思惑通りに動かすためか、はたまた不安定な、足がもつれそうになるような状況で作品を鑑賞させるためか、いずれにしてもこのような作品のギミックというのはとても面白く感じます。不安定な状況でこそ活きてくる作品たちに出会いたい方はArt Lab Aichiへ。

展覧会情報

Unprepared -無交差-

アーティスト|倉知可英(コンテンポラリーダンサー)・SKANK/スカンク(音楽家)・倉地比沙支(版画家)

会場|アートラボあいち3階

会期|2019年5月25日(土)~6月23日(日)
3人によるパフォーマンス:5月25日(土)、6月8日(土)、6月15日(土)、6月22日(土)各17:00~18:00

※期間中公演日以外の催しが無い日でも(特に日曜日)、私がインスタレーション作品に寄り添うように踊ることがあります。タイミングが合えば、あなたも見ることが出来るかもしれませんね。(倉知可英談)

観覧|無料

本展企画|倉地比沙支(版画家・愛知県立芸術大学教授)