積み重なる木口木版の世界。鶴田功生個展

積み重なる木口木版の世界。鶴田功生個展

2019-02-18
版画

一つの版をいくつも組み合わせて表現される作品たちは、華やかで時には寂しさや儚さが存在していました。また立体的に表される作品も面白いところでもあります。そんな世界観を作り出す鶴田功生さんの展覧会を今回取材してきました。

半立体で表現される木口木版の作品

切り抜き立体的に浮かび上がる作品。

鶴田氏の作品は木口木版によって制作されており、繊細な表現を可能にしつつ植物や動物のモチーフに対して銅版画よりも温かみのある質感を出せるのが特徴のようだ。

主に鶴田氏の作品は植物もしくは動物がモチーフになっており、単純に視覚的風景を版画に掘り起こし描くのではなく、モチーフ単体を一つの”スタンプ”のように利用しそれを”群生”させることによってさまざまな表現を行う。

また、版をするだけには留まらず版画的平面表現に粘土という立体表現素材を加え2.5次元とも言える版画作品を制作する。その作品がこちらだ。

腹の部分に鮮やかな金魚に似つかわしい赤色の着色が施してあり、生命を感じさせる。
写真上ではこの絶妙な立体感が伝わってこないのが残念なところではあるが、それにしても細部まで書き込まれた金魚の様相は木版とは思えないほどの精緻さを持っている。

標本のような木版

このような鶴田氏の作品を可能にするのはその使われる版紙にもこだわるからである。
基本的に作品に使われている版紙は「雁皮紙(がんぴし)」というトレーシングペーパーよりも薄く丈夫な紙だ。何よりとてつもなく薄いので刷った時どちらに刷られたかわからないほど綺麗に裏に写る。そのような性質を利用することによって、刷った版画が反転可能になりそれぞれの生物や植物にバリエーションを与え、単調なハンコ的表現から脱することができる。また、補強用の紙を裏張りすることによって立体作品にすることができるほどの強度を持たせることができる。

そして人の手で切り抜かれることによって生じる少しの誤差が、個体それぞれの個性を象徴しこのような作品を可能にしている。

まとめ

鶴田氏の作られる作品は立体のものが多い、それらは版画という平面的表現からの転換であり、またそれらを可能にする版の緻密さは注目に値する。このような版画作品においてのエディションはオリジナルのコピーではなくそれぞれのオリジナルであり、そこには偶然性の美しさが入り込む。

展覧会情報

鶴田功生展
2019.2.9/
土~2.23/

~木口木版画、コラージュ~
「失敗の中に可能性が眠っている」
https://galleryacs.amebaownd.com/

失敗と思われた事でも視点を変える事で新たな可能性を発見することがある。失敗した経験を記録・保管することが重要で、それこそが発見の引き出しとなる。 (鶴田功生)

会場:ギャラリーACS 

460-0008 名古屋市中区栄1丁目13-4 みその大林ビル1F
P&F:052-232-0828
Email:galleryacs@gmail.com 

OPEN:11:0018:00(最終日:17:00) 休み:日&月