霞む対象に目を凝らして。工藤千紘 「誰そ彼」

霞む対象に目を凝らして。工藤千紘 「誰そ彼」

2019-11-06
絵画

今回取材したのはgallery Valeur さんで行われた工藤千紘さんの展覧会「誰そ彼」

彼女の作品に登場する人々はどれも、どこか寂しそうに漂い続けているような情感を感じさせます。また、抽象化された顔や、柔らかに表現された輪郭や髪なども、鑑賞者の心にするりと入り込んでくるイメージを持ちました。それではご紹介致します。

ゆっくりと時間を塗り重ね

ゆっくりと描かれる工藤さんの絵画は、自身で撮った写真から生み出されます。

写真は比較的遅いシャッタースピードで撮影されているので、そのほとんどが(人影などはある程度わかるものもある)何を撮影さしたのかわからないぐらい抽象化されています。

工藤さんの作品制作の根底にあるテーマは「時間」。

なのでこのような「時間」を切り取るようなシャッターの切り方をして作品に作り上げているそうです。

また油絵という画材を選択しているのもこのためです。

油絵は塗り重ねる際に一度塗った絵の具を乾かすという工程が必要なのですが、その工程を経ることがさらに作品に対して時間の深みを増すことに繋がっているのです。

このように作られた作品ひとつひとつからは、どこか儚げなで多くの文脈を含んだストーリーを感じさせます。

見つめられる

工藤さんの作品の中でも多くモチーフにされていたのは「人物」。

今回は髪を意識したような作品が多く感じられました。

まとまった形でもっちりと描かれているものもあれば、シャープな線を意識したような繊細さを持つ作品もありました。

もっちりとした質感のある描かれた作品は比較的に髪がメインとなって描かれている印象を受けました。

例えばこの後ろ姿で描かれている作品などは顔が見えないため、想像が広がって行きます。

しかし、顔が描かれている作品にも様々な思いが感じられることも確かです。

抽象化された顔のパーツははっきりとした感情を鑑賞者に提示せず、私たちの鏡のようにその背景を変えていきます。

このような工藤さんの作る切ない儚げな表情は見る人を惹きつけていきます。

まとめ

柔らかに表現された工藤さんの作品たちはキャンバスの中から自分たちが覗き込まれているような感覚にも陥ります。人形のようなのっぺりとした顔が作る表情は、何かを待ち望んでいるようにも見えます。この不思議な魅力はどこからくるのでしょうか。

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展覧会情報

「誰そ彼」
工藤千紘

会期:2019/10/08 – 11/09
open:12:00 -18:00
日曜・月曜休み

場所:gallery Valeur
名古屋市名東区亀の井1-2-001

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