今回取材したのはSTANDING PINEさんで行われているジャンフランコ・ザペッティーニさんの個展
キャンバスが織りなす起伏の連続は、山脈のようにも計画的に作られた都市の道のようにも見えました。一定のリズムの中で生み出されるジャンフランコ・ザペッティーニさん(以下ザペッティーニさん)の作品は、私たちに何を気づかせてくれるのでしょうか。それではご紹介していきます。
国際的に高い評価を受けた「見えない絵画」
ザペッティーニさんが絵を描いていく中で一番大切にしている部分は制作過程です。
例えばこの絵画、
1970年代に制作された初期作品です。
全体的に明るく、消え入りそうなイメージが強いこの絵画ですが、実はもともとのキャンバスの色は黒色だったそうです。完成されたこの絵画からは少しも気づくことができなかったのですが、またそこがこの絵画の奥深さでもあります。
下がどのような色であっても上に塗られる色によって消え去ってしまう。あたかも存在がなかったようになってしまう。そのような虚構性を表現する上でとても面白い試みだと感じました。
また、近年取り組まれている絵画には過去の作品と大きく変化していました。
絵画の中に凹凸を入れ込み一定の規律のようなものをつくったり、印象的な赤が全面的に使われた作品などがあり、とても興味深く感じました。
年月とともに変化していく作品。
しかし、その中には脈々と続くザッペティーニさんの変わらないポリシーがあるようにも感じられました。
日本の「禅」を取り込む
冒頭にご紹介した作品を作り終え、数々の名だたる展覧会に名を連ねた後に、ザッペティーニさんは自分自身の存在意義を考え始めます。ヨーロッパ、中東、アフリカ、アジアなど様々な場所を巡り旅を行いました。
その中で触れてきたアジアやアフリカなどの多様な文化と生活。その中でザッペティーニさんはどのように感じたのでしょうか。
近年作られた作品のなかにこのようなものがありました。
こちらの作品には日本の「禅」が取り入れられているように思えます。
作品自体の形は四角形なのですが、よく見るとその中に丸が描かれていることがわかります。
この四角と丸、これは源光庵にある「悟りの窓・迷いの窓」がイメージとしてあるのではないかと感じました。
「悟りの窓・迷いの窓」が表すのは人間の一生。
このような意味がザペッティーニさんが求めていた「自分自身の存在意義」に対しての答えになりうるものだったのかもしれません。
まとめ
ご紹介したザペッティーニさんの作品はどれも「描く」という行為の思想から生まれているように感じました。日本の「禅」の文化を取り込んだのも、自身の作品に対する姿勢と「禅」の思想がうまく重なり取り入れられているのかもしれません。また、色のもつそれぞれの力というのを最大限に生かし引き出された存在感も圧倒的でした。
展覧会情報
ジャンフランコ・ザッペティーニ 個展
会期:2019/6/15~2019/7/6 open:13:00 - 19:00 月・火・祝日休廊 (現在 企画展がない日もCLOSED) 場所:STANDING PINE 名古屋市中区錦2丁目5-24 えびすビル Part2 3F