今回取材したのはgallery Valeurさんで行われた片岡美保香さんの展覧会「眺めるものたち」
現実から切り取られた風景やモチーフが現実ではあり得ない組み合わせで構成された絵画は、鑑賞者を不思議な感覚に陥れます。非現実の中に存在する現実は私たちの心に何を残していくのでしょうか。それではご紹介いたします。
少し歪んだ世界
ギャラリーに入り最初に目にした作品がこちら。
一見普通のプールサイドのように見えますがよくめを凝らして見てみるとプールサイドに座っている人の頭が花の入った花瓶に置き換わっています。
重力が無視されているようなこの構図は鑑賞者にどこか不思議な感覚を与えます。
そのまま中へ入り作品を見ていくと上半身がパラソルになっている作品だったり、
頭の中がステージになっている作品などがありました。
作品の中で組み合わされているモチーフはそれぞれなんの関係も内容に見えます。
しかし、根底ではどこか繋がっているのではないでしょうか。
例えば先ほど紹介した頭の中にステージがある作品ですが、これは思考のプロセスの中にある自身の欲望が現れているのでしょうか。
このような表現から伝わるイメージもまた、鑑賞者に不思議な感覚を与える要素の一つです。
空間へと溶け出す文字
ギャラリー奥の小部屋に展示されていたこちらの作品。
部屋全体がダンボールに覆い尽くされています。
よく見てみるとダンボールに書いてあるロゴの文字が溶け出したように表現されているのがわかります。
この空間も先ほどと同じく不思議な感覚を覚えたのですが、ここでの感じ方は少し超現実性が強いように感じました。
ダンボールで一面を多い閉鎖的な空間を演出することによってより作家の考え方が鑑賞者に入り込んでくるようなイメージがありました。
ここまで鑑賞してきた中で作家自身は自分の価値観と世界の価値観の違いを伝えているのではないかと感じました。
自分が見る世界と他者がみる世界は必ずどこか違う点があり、その齟齬をどのように乗り越え、解釈していくのかが現代の我々にとっての課題である部分を指摘し、それを作家自身の表現に持っていったような印象を受けました。
まとめ
現実が溶け出していくような表現と現実と非現実を交差させていく表現が相まって鑑賞者の心を不思議な感覚で捕えます。心象風景のようなこの絵画の構成は私たちの心の奥にある何かを引き出してくるようなそんな感覚になりました。
前回このギャラリーで行われた展覧会
展覧会情報
眺めるものたち 片岡美保香
会期:2019.08.20 – 09.14
会場:gallery Valuer