捉えられない感情と揺らぎ。「息を止める事をやめる」 折原 智江

捉えられない感情と揺らぎ。「息を止める事をやめる」 折原 智江

2019-09-16
インスタレーション

今回取材したのはgalleryNさんで行われた折原智江さんの展覧会「息を止めることをやめる」

涙から作られた盛り塩や、線香で作られた松など圧倒的な作業量や時間をかけて作られたような作品が多く、作家さん自身の作品へとするストイックさなどが伺えました。それではご紹介いたします。

流れだす煙

ギャラリーの中央に配置されたこの庭園。

灯篭といくつかの石、そして松という組み合わせで庭園が構成されています。
一見すると普通の庭園を模した空間ですが、この空間にあるもの全ては線香で作られています。

松に注目してみましょう。

松に目線を落としてみると、もくもくと漂う煙が見えました。

庭園に設置されている松の一本一本の葉が線香になっていて、幹すらも全て線香で作られていました。

この松一つにつけられている松の本数はおよそ3000~5000本。
気が遠くなるような本数を作りそれを完成させるというストイックな姿勢が見えたような気がしました。

また、下の砂地の部分は全て灰で埋められていて、線香が燃え尽きて灰になった時全てが還るような循環性を提示しているようでした。

感情と理性の間にある

こちらは離れの和室にあった作品。

この盛り塩は全て涙から作られているそうです。

盛り塩の奥に置いてあるこのキットは涙を採取するためのもので、涙が出た時はスポイトで涙を吸い取り貯めていたんだそうです。

このぐらい大きな盛り塩ができるまでにはペットボトル2本半ほどいるそうで途方もない感覚になりました。

これまでご紹介してきた作品はどれも作家の高い精神性を表すようなものになっており、作品び対する情熱・ストイックさや、感情と理性の狭間で揺れ動く人間の像が垣間見えました。

私たちが普段生きている中で抱えるストレス・悲しみ・精神的ダメージは、ため息や涙を流すことによって少しづつ軽減されているという研究結果もあります。

人間関係が複雑化していく現代において私たちはすれ違いやぶつかり合いにどのように向き合っていくべきなのでしょうか。

そんなことが問われているように思えた展覧会です。

まとめ

ペットボトル二本半もの涙を貯めて作られた盛り塩は作家さん自身の精神性やストイックな作品に対する姿勢などが見え圧倒されました。また、映像作品もついついずっと眺めてしまうものになっていて時間を忘れるように見てしまいました。

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展覧会情報

折原 智江「息を止める事をやめる」

会期:2019.8.24 sat - 9.8 sun
open:13:00 - 20:00(水曜・木曜は休廊) 

初日は18時開廊
最終日は18時まで
8.24 sat 19:00 ギャラリートーク

会場:gallery N
名古屋市千種区鏡池通3-5-1

呼吸によって燃焼する炭
涙から生成した塩

辛いことや我慢する事があるとため息をする。
悔しい事や悲しい事が起こると泣く。
身体から露出する感情のマテリアルを作品化したいと思った。

ため息や涙を流す事によって、悲しむべき事を忘れて(記憶力低下)痛みに反応せず(免疫力低下)行動を起こす事は、環境への適応反応であり、結果としてストレスを解消することができるが、消失をする。形に起こして、そこから見えてくる希望について考える。

身体から負の感情が吐き出される時、身体は生きろと訴えている事を忘れないで欲しい。
(折原 智江)