今回取材したのはエビスアートラボ(名古屋市中区)で行われたさとうくみ子さんの展覧会「一周まわる」インスタレーションから映像まで様々なアプローチで「一周まわる」ということの表現を試みていました。会場に溢れた「一周」をぜひ味わってください。それではご紹介していきます。
検証される「一周」
会場に入ると突然頭上に現れたこちらの作品。
会場を一周するように展示されたこの作品は「一周」の概念を表しているそうです。
紐がつけられていたり、水玉模様がついていたりと興味をそそります。この作品は会場に搬入してから作られたそうで、つけられている紐が地面ギリギリでぴったりついていることからもわかります。
続いてこちらの映像作品を見てみましょう。
これは、屋内野外に関係なく様々な場所で「一周」をしているものです。
動画の中では駅のエレベーターを「一周」していますね。
この映像作品はこの一つだけではなく、3人称視点からの撮影も展示してありました。
なるほど、主観と客観から「一周」を捉え、どのようなものであるかを検証しているようにも見えます。
また、実際に撮影に用いられた装置(作品)も展示してありました。
壁に見えている女性は作家さんを表しています。
変わりゆく作品とイメージ
ひとしきり作品を見終え、会場内をゆっくりと見回すと壁に展示してあった下絵のようなものが目に飛び込んできました。
作家本人は「下絵のようでもありますが実際作った作品はこれとは少し違っていて、イメージをドローイングしたようなものです。」とおっしゃっていました。
例えばこの組み合わせ。
イメージとしてこのベンチを突き抜けている木は犬の舌で、「ペロリといたしましょう」と書いてあるように棒の先にある顔をなめている様を表していました。この木の棒が舌のような形状(蛇のようにも見えますが)をしていることからもそれがわかります。
さて、ここから間違い探しが始まります。
下絵と実際の作品、どこが違うのでしょう。
私が見つけたのは、牙がないところです。
間違いを見つけたところで一つ疑問が浮かびます。
「果たしてこれは犬を表現するために作られたのだろうか。」
この疑問の答えとして私の中には、
「一周」という概念を表す上での道具にすぎず、犬を忠実に表現する必要はないので作っていないのではないか。
ということが思い浮かびました。この作品のキモとなるのはあくまで「一周」している部分でありその「一周」している部分は犬ではなく犬の舌であるからということです。
また、犬以外の部分すなわちなめられている側の部分にも注目してみましょう。
この人間(多分)には足も手もありません。
表現をする上で必要のないものだと判断されそぎ落とされたのでしょうか。
しかし、この人間には対になった臓器のようなものとそれに付随するようにつけられた何かがあります。これを必要だと判断したのは何故なのでしょうか。
今回はこのあたりで引き上げたいと思います。
答えを知りたい方や、実際にみてみたい方は会場のエビスアートラボさんまでぜひお越しください。
まとめ
理解不能、答えを出すことのできない作品と向き合うことは現代美術の大きな魅力の一つでもあります。今回はその片鱗を少しだけみることができたのかもしれません。「一周」という概念に込められた作家の思いと向き合い作品を鑑賞していくと何か閃いてくるかもしれませんね。
このギャラリーで前回行われた展覧会
展覧会情報
さとう くみ子「一周まわる」
会期:4/20〜5/26
open:14:00〜19:00
火水GW休み
場所:エビスアートラボ
愛知県名古屋市中区錦2-5-25 ヱビスビルパート1 4F
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