パネルから広がっていく。「忘れられた部屋」

パネルから広がっていく。「忘れられた部屋」

2019-03-30
絵画

今回取材したのはエビスアートラボ(名古屋市中区)で行われた西田麗良さんの「忘れられた部屋」
展示枚数は3枚だけ、他には何も置かない、というとてもシンプルな展覧会です。
しかし枚数に惑わされてはいけません。
圧倒的な一つ一つの作品の存在感に魅力されました。
そんな西田麗良さんの展覧会「忘れられた部屋」をご紹介します。

白のベールで隠されたモチーフ

まず作品をみてみましょう。

見た瞬間は何が描かれているのか分からないのですが、ぐっと近づいて見てみるとこのように人が描かれていることがわかります。
また、ここに描かれている人物はまるで写真をプリントして写したように精巧なものでした。
ものすごく高い技術力を持っていることがこの時点でわかります。

この絵画は全てがアクリル絵の具で描かれていて、その他のものは全く使っていません。
このデジタルのような透明感も、ご自身で研究・実験を繰り返しながら作っているそうです。

この絵画の作成手順は、まずモデルさんを撮影し、その写真を元に描いていきます。
西田さんはこの撮影、衣装、メイクに至る全ての点をご自身で行っているそうで、作品に対する尋常ではないストイックさを感じます。

白とは何か

この展覧会のコンセプトの「白」について、キャプションに書いてありました。

白について

「白」は心の色だと思います。
それはまっさらな、色のないものではなく、寧ろとても鮮やかなもので、
でも、どんどん移り変わるものだから、
良く目を凝らして見ないと、注意深く観察していないと、
見落としてしまうものなんだと思います。
(後略)

作者の西田さんは「白」を、「色のないもの」ではなく「鮮やかなもの」と捉えることによってこれらの作品を制作しています。

このこだわりは絵が描かれるパネルにも出ていました。
丸いパネルと角が丸い四角形と横の部分のそれぞれが丸みを帯ています。
この「丸み」というのはどのような意味を持っているのか西田さんに訪ねたところ、
「丸みを作ることによって作品の中だけではなく、作品の外へ広がっていくようなことを演出しようと思いこのように制作しました」と答えてくださいました。

なるほど、「白」の世界で包み込まれていく感覚はここから生まれているのかもしれませんね。

まとめ

コンセプトから見える世界は独特の浮遊感と不安定さを持っていました。
目を離したすきに、一瞬で消えてしまいそうな作品たちは鑑賞者の目を掴んで離しません。
これからどのような展開を見せていくのかとても楽しみです。

展覧会情報

忘れられた部屋

会期:3/9〜3/31
場所:エビスアートラボ
愛知県名古屋市中区錦2-5-25 えびすビル パート1 4F