洞穴に入ったのか、飲み込まれたのか。竹内孝和/Takakazu TAKEUCHI  洞窟の作戦/Operation the Cave

洞穴に入ったのか、飲み込まれたのか。竹内孝和/Takakazu TAKEUCHI 洞窟の作戦/Operation the Cave

2019-08-15
インスタレーション

今回取材したのはLADgalleryさんで行われた、
竹内孝和さんの展覧会「洞窟の作戦/Operation the Cave」

gallery全てを一つの作品に落とし込み、鑑賞者を竹内さんの作る世界へと引きずり込んでいきます。作品の中に散りばめられた私たち人類の「歴史」も見どころです。それではご紹介していきます。

原始時代から現在の私たちへ受け継がれているもの

ギャラリーに入ると、壁が黒っぽい何かで覆われていることに気がつきます。

壁を覆っているこれらは竹内さんの作品です。

この展覧会は、原始時代をイメージ構成されたもので、ラスコーの洞窟絵画のような形で作れたこの作品には様々な仕掛けが施されています。

例えば、ポツポツとある凹凸。

これは実際に竹内さんがギャラリー内で土を投げて作られたものです。この行為には古代に行われた「狩猟」のイメージを投影しており、当時の狩猟の手段であった投擲を実際に行い表現に繋げているそうです。

また、見渡すと気がつくこの鮮かな色の正体は鳥の羽です。
竹内さんが飼っている鳥が落とした羽を作品に使っているそう。そのほかにも、羽だけではない剥製も使われていてリアリティに富んでいました。

これらの鳥が石の下敷きになっているのは狩猟が成功した、石が鳥に当たる瞬間の映像を表現しているようです。

空間そのものの性質を変える

ギャラリー全体を作品に変えてしまう竹内さんの作品は、訪れた私たちをも作品としてその体内へと飲み込んできます。

出入り口が一つであるという建物の特性を利用し、あえて閉塞感を増強させ、それを別のイメージへと繋げていくという表現方法は興味深く感じました。長い間私たち人類は洞窟に暮らしていました。その遺伝子に刻まれた歴史は、容易く変わっていくことなく、ふとした瞬間に私たちの中にぽつぽつとフラッシュバックします。

床に設置されていたこの作品も、私たちがどのような立ち位置で自然の中に存在してきたかという記憶を静かに呼びさますようでした。

技術が急速に進歩することにより環境の変化が加速していく現代において、私たち人類のもつアイデンティティとはなんなのかという「問い」を改めて可視化するある種の装置的な役割も持っているのかもしれません。

まとめ

ギャラリー全体が装置になっていることや、壁の中で生まれていくストーリーは、私たちがどのように種を繋いできたのかということを彷彿とさせます。流れていく時間や劇的に変わっていく環境そんな中にいる現代の我々に「生きていく」ということの本質はなんなのかということを突きつけてくるようです。

展覧会情報

洞窟の作戦/Operation the Cave

会期:2019/08/01 - 09/01
open:13:00 - 18:00(金土19時まで)
期間中毎週月曜休廊 
※8月12日(祝)は開廊し、翌13日(火)を休廊とします。

場所:LAD gallery
名古屋市西区那古野1-14-18
那古野ビル北館121号室

一説によると、狩猟採集時代から現代に向けヒトの脳は縮小してきたという。太古の人々は生と死の狭間で生かされながら世界をどのように捉え、また対峙していたのだろうか。彼らの生活の拠点であった洞窟に残る壁画は素晴らしく、また有名であるが、そこは聖なる空間であり呪術的な儀式が行われていたとも考えられる。神秘に満ちたその場から我々が生きるこの世界を眺めてみたい。