水彩のような淡い情景を油絵で。井上 実展 を取材

水彩のような淡い情景を油絵で。井上 実展 を取材

2019-05-19
絵画

今回取材したのはseesawgalleryさん(名古屋市瑞穂区)で行われた井上実さんの展覧会
水彩のように描かれた絵画には、何でもないような日常とそこに潜むダークな美しさを見ることができました。それではご紹介していきます。

モチーフを日常から切り取る

井上さんの作品のモチーフとなるのは、日常にある一場面。
何気ないこの一場面ですが、ランダムに選び抜かれたわけではなく、井上さん自身の中にあるイメージと照らし合わせ、合致したものをモチーフとして採用しているそうです。

こちらの作品のモチーフとなっているのは「ゲソ」
食卓に並んだこの「ゲソ」は、井上さんの中でぴったりとくるものだったようです。

その他にも、プラスチックケースをモチーフとした作品もありました。
この作品に関しては先ほどの「ゲソ」の絵画とは打って変わってモチーフの輪郭がぼやけ実際の像が捉えにくくなっています。

なるほど、抽象と具象をうまく展覧会の中で織り交ぜ、ストーリーを作り上げているのかもしれません。

水彩のような油絵とモチーフの関わり

ここまでの作品はサブタイトルにもあるように全て油絵で描かれています。
なぜこのような水彩に似た淡さや質感が出せるのか、その答えは絵の具の配合にありました。

井上さんはもともと油絵が苦手で、あまり描かずにいたのですが、ある時油絵を描かなければいけないことになりました。油絵は画溶液という液体で色の薄さなどを調節し描くのですが、井上さんはあえてその画溶液の割合を多くしてみました。その時に偶然生まれたのがこの画法です。

井上さんが選ぶモチーフとこの水彩のような表現は、普段目にする水彩とは一味ちがうものになっています。水彩画は基本明るく、幸せな夢の中のようなイメージで着色されていくのですが、井上さんの作品は少し違い、どちらかというとダークな、森林に迷い込み上を見上げた時のような暗さと深さを持っているものでした。

なるほど、油絵の性質と水彩のようなタッチのギャップで鑑賞者を惹きつけているのかもしれません。

まとめ

水彩のような独特の淡さと、モチーフの選び方が組み合わさって一般的な水彩画よりもダークな雰囲気をもちつつも油絵による色調も活かされていてとても興味深く感じました。この展覧会は2019/6/29まで開催しているのでぜひ実際に見て体感してください。新しい発見が生まれるかもしれません。

前回このギャラリーで行われた展覧会

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atie.site

展覧会情報

井上 実展

トークイベント
5月11日[土] 18:00−
井上 実(画家)+柄沢祐輔(建築家)+古谷利裕(画家/評論家)

トーク終了後、オープニングパーティー

Minoru INOUE
1970 大阪府生まれ
1992 東京造形大学造形学部美術学科Ⅰ類 退学
1992 フランス滞在(−1993)

主な個展
2016 「井上実展」gallery COEXIST-TOKYO、東京
2015 「井上実展」art space kimura ASK?、東京
2013 「井上実展」プラザ・ギャラリー、東京
「井上実ミニ展」ブックギャラリーポポタム shop、東京
2005 「井上実展」A-things、東京
2003 「project N 14」東京オペラシティ アートギャラリー、東京

主なグループ展
2014 「イタヅクシ」See Saw gallery/愛知県立芸術大学サテライトギャラリー、愛知
2011 「KAITEKIのかたち」スパイラルガーデン、東京
2008 「第四回造形現代芸術家展−変換される視線」東京造形大学付属美術館、東京

会期:5/11~6/29

open [水・木] 12:00 – 17:00 / [金・土] 12:00 – 19:00
close [日・月・火]

場所:See Saw gallery + hibit
愛知県名古屋市瑞穂区密柑山町2-29