スマイルの中に宿るメッセージ。「Face-conscious-」

スマイルの中に宿るメッセージ。「Face-conscious-」

2019-05-18
インスタレーション

今回取材したのはgalleryValeurさん(名古屋市名東区)で行われた鵜飼聡子さんの展覧会「Face-conscious-」
顔に対するイメージや、加工、積み上げられた歴史など様々な視点から「顔」というものに対しての考察が試みられていました。スマイリー(ニコちゃんマーク)を使った表現にも注目です。それではご紹介いたします。

「美」の変遷をたどる

まずはじめに観て欲しいのはこの壁に書かれたマップです。

この展覧会のテーマ「顔へのアレンジ」を分類しマップ化したものです。

さらに近づいてみてみるとこれらの分類マップのすきまに小さなメモ書きのようなものもありました。書かれているものは「宗教」や「日本古来の伝統」「ボディコン」など幅広く分類されていて多様性にあふれていました。このマップを読み進めていくことは作家さんである鵜飼さんの思考を辿っていくようで大変興味深く感じました。

また、この展覧会ではムルシ族を今回のテーマ「顔へのアレンジ」の具体例としていて、会場には彼らの耳や鼻、口などを模した石膏が展示されていました。

ムルシ族とは 
エチオピアに住んでいる唇にお皿をはめた少数民族。 
お皿を唇にはめた背景には、19世紀頃アフリカで行われていた奴隷制度による。
美しい女性や子どもを産むことができる若い女性は重宝され、奴隷として売買されやすかった。
そのためムルシ族の女性は下唇にお皿をはめて、自分を醜く見せて奴隷としてさらわれることを避けていた。

このような歴史を持つ彼らですが、女性は唇にはめるお皿が大きければ大きいほど美しいとされていて、お皿の大きさによって結婚時に贈られる牛の数などが変わるそうです。美を遠ざけるために施した仕掛けが、時を経て美しく変わっていくことに人類の多様性を感じました。

色分けされた人類

こちらの作品も興味深いものでした。
この作品の主役となっているのは、ほとんどの人が知っているであろうこの「スマイリー」
もともとは保険会社のキャンペーンによって生み出されたキャラクターです。キャンペーンで生み出されたなんの他意も持たないこのキャラクターがどうしてこのように配置されているのでしょうか。

作家の鵜飼さんはこのスマイリーを黄色人種の人と見立てていました。実際全てのお皿の数と、黄色いスマイリーの数の比は8:2で、これは黄色人種とその他の人種の割合と重なります。

キャンペーンであること以外なんの意味も持たなかったマークが時代を経て新たな意味を持ってしまったことに驚きつつも、世界が変容していることに改めて認知させられました。

まとめ

今回の展覧会の中で扱っているテーマは、グローバル化する現代社会に対して問題提起しているように思えました。スマイリーが意図せずブラックジョーク的な意味が生まれてしまったという現象もとても興味深く、考える価値のある作品だと思いました。今回ご紹介しきれなかった興味深い作品も数多く展示されていますので、行ってみてはどうでしょうか。会期は2019/6/9までです。

前回このギャラリーで行われた展覧会

キャンバスの上で鋭くうねる。門田 光雅「Reform」を取材
今回取材したのはgallery Valeurさんで行われた門田 光雅さんの展覧会「Reform」 門田さんの作る作品は、金継ぎのような絵の具の凹凸が特徴的でした…
atie.site

展覧会情報

ace-conscious-
鵜飼聡子による、gallery Valeurにおける2回目の個展。
”顔”を題材にしたインスタレーションを含む作品の展示。

あいちトリエンナーレパートナーシップ事業

会期:5/7~6/8
open:12:00~18:00
日月休み

場所:galleryValeur
名古屋市名東区亀の井1-2-001

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