今回取材したのはGalleryNAOMASAKIさんで行われた中西洋人さんの展覧会「宿り木」
倒木や流木から新たに生み出されるその形は日常的な物質へと変換されて、私たちの前に提示されます。そのまま朽ちていく運命の物質を拾い上げ新しいものへと生まれ変わらせるその行為は生命の循環を想起させました。それではご紹介いたします。
質感を変換する
中西さんが制作する作品は全て流木や倒木など、全て木から制作されています。
使われている部分は木の幹の部分から皮まで幅広く使用されていました。
例えばこちらの作品。
皮を素材として使用しているのですが、近くで実際に見てみるとかなりマットな質感になっていました。
また、でこぼことなっているこの表面は裏側のでこぼことリンクしており、裏が凸になっている場合こちらの見えている面が凹んで表現されています。
この凹凸と質感によりまるで山脈のような表面にも見え、木そのものの美しさが存分に生かされているように思えました。
そのほかにも、まるで陶器のような質感を持たせた作品もありました。
木という自然を構成する上で欠かせない存在が私たちの生活へどのように木という存在のまま共存させていくかという挑戦のようにも見えました。
存在を変換する
中西さんの代表的な作品モチーフであり、今回の展覧会でも一際目を引いたのがこのロープの作品です。
一見すると普段私たちが目にするロープと同じように見えますが、どこかに違和感を感じます。
その違和感の一つは、ロープが浮いたまま存在できていることでしょう。
これにより、この作品の存在感が強くなっています。
また、ぐるぐると渦を巻かれているこの状態にも注目してみましょう。
この形は自然の中にそのままうち捨てられたような、自然本来の形のように思えます。
それに少しだけ手を加え、日常的な物質に変換することによって作品の面白さや存在感がさらに引き立てられているようでした。
自然本来の文脈や記憶を残しつつ、新たなものへと変換し受け継いでいく中西さんの作品は、我々人間が破壊し続けている自然の美しさを改めて私たちに与えてくれます。
まとめ
全ての物質は止まることなくその形を変え、様々な物質の記憶の中に入り込みます。
私たちの体がそうであるように、全ての物質はいつかは朽ち果て消える。しかしその次の瞬間には違う物質へと変わっていきまた新たな運命をたどっていく、そんな感覚を彷彿とさせる展覧会になっていました。
前回このギャラリーで行われた展覧会
展覧会情報
中西洋人「宿り木」
会期:2019.10.05 ~ 10.20
open:12:00 ~ 20:00
火曜日休み
場所:GalleryNAOMASAKI
名古屋市東区葵2-3-4