モチーフに隠された「欲望」山口恵味版画展

モチーフに隠された「欲望」山口恵味版画展

2019-03-18
版画

今回取材したのはギャラリー芽楽(名古屋市名東区)で行われた山口恵味さんの版画展です。描かれているいちごや目玉の人間、仮面をかぶった人間などが現れています。このキャラクターたちはどのようなことを私たちに問いかけてきているのでしょうか。この問いかけを深く掘りつつ展覧会を紹介していきたいと思います。

「いちご」が現す欲望

山口さんの作品にはいちごがほとんど描いてあります。
船にしてみたり、

餌にしてみたりなど。


様々なところに登場しています。

このいちごにはどんな意味を持って登場しているのか。
それは人間のもつ「欲望」を表しています。
例えばこの作品。

お金で人を釣っているような図ですが、よく見るとこの人間の踏んでいるのは「いちご」です。
「お金が欲しい」という欲望の上に成り立つ資本家と労働者の関係を表しているのでしょうか。

またこちらは「タイダ」という作品です。


家政婦が家の掃除をしているようなところですが、この家政婦タバコを吸っていますし自分の靴の汚れもそのままです。
これはめんどくさいからサボってしまおうという「怠惰」を表したものなのでしょう。

この作品も端の方にもいちごがひょっこりと登場しています。

様々な「人間」

「いちご」以外にも様々なものが人間の「欲望」を表しているものもありました。
この仮面をかぶった人間がその一つです。

これは「こどもしゃちょう」という作品です。
子供が仮面をかぶっているという構図ですが、後ろの額の中にもいちごが登場しています。
この作品は、記者会見の際号泣した議員や電車内で叫ぶおじさんなど、現代の日本社会にいる「大人になりきれなかった大人」を表しているのかもしれません。

こちらの作品もみてみましょう。


この作品に登場している目玉人間は、山口さんによると「他の人よりも欲望が強い人」という意味が込められて作られているそうです。

いちごに深く腰掛けているの様子は、「いちご」という欲望に溺れているようにも思えます。

まとめ

山口さんの作品に登場するものや人は、人間の本能的な「欲望」を表しているようでとても面白かったです。見る人によってもどんな欲望が隠されているのかが変わってくる作品でもあると思いました。

展覧会情報

山口恵味版画(アクアチント)展

会期:3/2~3/17
open:12:00~18:00
休み:火・水曜日

場所:ギャラリー芽楽
名古屋市名東区梅森坂1-903