花と鳥と初えびす。吉田正樹手彩木版絵展/追悼展

花と鳥と初えびす。吉田正樹手彩木版絵展/追悼展

2019-04-11
版画

今回取材したのはギャラリ想(名古屋市千種区)さんで行われた吉田正樹さんの手彩木版絵展
吉田さんは12年に渡り熱田神宮の初えびすのポスターを制作されていました。また、幻の季刊誌「銀花」の百号特別綴じ込み作品も手がけられています。そんな吉田正樹さんの手彩木版絵展をご紹介いたします。

木版画家として、長年に渡り創作を続け、その温もりある作風が多くのファンに愛されましたが、残念なことに、今年1月、急逝されました。ご冥福を心よりお祈りし、そのご創作の一端をご紹介したいと思います。

第一線で描き、刷り続けた

ギャラリーに入り目に飛び込んできたのはB1サイズ(728mm×1030mm)の巨大ポスター。
このポスターみたことある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

熱田神宮で行われる「初えびす」のものです。
吉田さんはこれをちょうど干支一周分、つまり12年間、12の干支とえびすの版画を創作されました。

実際に制作に使われていた道具も展示してあり、すごく綺麗に整頓なさっていました。
作品に対して、真摯に向き合い大切にされていたのがすごく伝わります。

また、初えびすの他に、幻の季刊誌とも呼ばれる「銀花」という雑誌にも百号特別綴じ込み作品なども手がけられています。
これは、当時を代表する版画家13人を選出し、作品を紹介したもので、この綴じ込み付録のすごいところは、綴じ込みされている作品が一つ一つ手作業で刷られていることです。そんなことから、希少性がとても高くなり、「幻の季刊誌」と呼ばれているのかもしれません。
吉田さんはこのために3,000枚もの版画を刷ったとお聞きしました。

蝶と鳥を中心に

吉田さんは版を作るモデルとなる蝶と鳥をみずから撮影していたそうです。
めずらしい種を求め日本国内だけではなく海外にも行かれていました。

身近な蝶々から、さまざまな種類の鳥など、めったにみることのないような種も撮影に成功していて、とても色鮮やかに刷られていました。
これはアオタテハモドキという種類の蝶で、実際の大きさは小指ほどです。
ここまで小さい蝶でも緻密に再現をし、紙の上で輝かせました。

吉田さんは様々な手法で版画を創作されましたが、今回展示の手彩木版絵の制作方法は、黒い部分の版を刷作って刷り、その後、手作業で色をつけて完成させていくものです。
一切ぶれることなく色つけされた作品にとても驚きました。

まとめ

12年にも渡り版画を制作した初えびすや、丁寧に塗り込まれた手彩木版絵の一つ一つが吉田さんの作品に対する誠実さのようなものを感じることができました。また、絵だけを描いて終わりではなく、道具まで綺麗に整えてあるのを見てより一層思いました。

吉田正樹さんの新作が二度と見られないのがとても残念ですが、最後の展覧会を取材させていただき本当に感謝しています。
この記事が吉田様に届きますよう。

前回行われた展覧会

線が絡み合う表現とガラス絵。平野えり個展「DIARY」

展覧会情報

吉田正樹展

場所:ギャラリ想
名古屋市千種区今池南3-9

会期:3/28〜4/7
open:12:00~18:00
休館:火・水曜